第７２回日本ダービー観戦記

　第７２回日本ダービーは、史上最高の単勝支持率７３．４％という断然の１番人気に支持された皐月賞馬ディープインパクトが、直線で次元の違う伸びを見せ他の１７頭を寄せ付けず優勝、１３年ぶりの「無敗の２冠馬」となりました。以下着順です。

　　第７２回東京優駿（日本ダービー）（ＧI、東京芝２４００Ｍ、３歳牡・牝、定量、指定、良）全着順

配当

［ＰＥＮＴＡの写真付観戦記！］

　時刻は、１５時少し前・・・いよいよ「あの馬」がパドックへ姿を現わした。　白いゼッケンに「５」の数字・・・ここまで４戦無敗、皐月賞を圧倒的な内容で制し、１３年ぶりに「無敗の２冠馬」制覇を目指すディープインパクトが、その馬だ。　とはいえ、ゴール前に確保された席から身動きが取れなくなっている自分は、その様子をターフビジョンで見るしか無いのだが。　ただ、その限りでも時折首を上下させ、尻ッ跳ねをしたりと・・・これまで見せたことが無い様子を見せたのは、明らかにわかった。　これがスタート直前にはどうなっているのだろうか。　

　やがて、本馬場入場の時刻。　ディープインパクトが姿を現わし紹介された瞬間、場内を埋め尽くす観衆から大歓声が沸き起こる。　場内は、ここ数年よりも多くの観衆で埋め尽くされ、その数多くがこの馬目当て、だったわけだから・・・至極当然のコトだった（１４万人を超える入場者、だったらしい）。　ディープインパクトは、コースに入場した後も相変わらず、首を上げ下げするなどテンションが高いままの状態。　鞍上の武豊が、なだめるのに専念してる様子がターフビジョンで見て取れた。　能力は他馬より図抜けてるのはわかってるのだが、ちょっとテンション高すぎるなぁ・・・と、この時は感じた。　ただ後で考えれば、このコトすら・・・この馬のあまりの凄さを裏付ける、その要因の１つにしかならなかったのだが。

　時は過ぎ・・・いよいよ発走時刻の１５時４０分となった。　その瞬間・・・それまであれだけテンションが高かったディープインパクトが、突然ピタっとしたように落ち着いたのだ。　ゲート入りも何の問題も無く、極めてスムーズだった。　たぶん、馬自身がレースの瞬間が来ているのを理解しているのだろう。　これならば、全力を遺憾なく発揮できそうだ。　やがて、１８頭全馬のゲート入りが終わり・・・態勢完了！　他の馬を操る騎手も、ただ黙って見ているだけでは無いだろう。　今年は、凄い日本ダービーを見ることができそうだ。

　レーススタート！　と同時に、内側の赤い帽子がまたも出遅れた。　皐月賞に続きディープインパクトは出遅れた。　そのまま、後ろから２〜３頭目に位置した。　レースはコスモオースティンを先頭に、シャドウゲイトやインティライミ、シルクトゥルーパーといった馬が先行した。　ダンツキッチョウが、その直後の位置取り。　アドマイヤジャパンがちょうど中間に位置。　注目のディープインパクトはその後ろの集団の一角に位置し、前にアドマイヤフジ、横にローゼンクロイツ。　そして、皐月賞２着馬のシックスセンスが皐月賞同様、ディープインパクトを見るようにして、後ろから３頭目の位置。　そしてこれが意外だったのだが・・・マイネルレコルトが何と更にその後ろ、最後方の位置取りだった。　前に行くと思ったが、何とその正反対。　これは、明らかに２着や３着狙いのレース運びに見えた。

　最初の１０００Ｍは、５９秒台の後半ぐらいだった（正確には５９秒９）。　そして、先ほどの隊列は３コーナーを過ぎる辺りまでそのままで推移。　ディープインパクトは３コーナー過ぎまでは内々のコース取りだったが、４コーナー手前で外側に出し、そこで徐々に進出開始。　しかしながら、その段階で既に他馬の進出時の脚とはレベルが違っていた。　あっという間に先団に取り付き、直線を向いた時点では既に先行集団の一番外側に出ていた。　その時、青い帽子のインティライミが出し抜けを食らわそうと、最内の経済コースを取って先頭に立っていた。　一瞬だけ、「まさか？」と思わせた。　が、次の瞬間・・・残り４００Ｍを過ぎてディープインパクトのエンジンのスイッチがＯＮになった時点で、その「まさか？」は完璧に消し飛ばされたのだ。

　そのエンジンの性能の高さたるや、大袈裟ではなく他の馬が「歩いている」ように見えるほどの凄い破壊力だった。　それは、単なる「すごい」の一言で片付けるのは失礼なほどだったのだが、ボキャブラリの乏しい自分にはとても上手く表現できない。　とにかく、それほどの凄さ・・・だったということだ。　他の馬よりも一番外側を回していながら、つまりは１番長い距離を走っていながら、最後は２着に５馬身差をつけて堂々とゴール。　ここに「１３年ぶりの無敗の２冠馬」が誕生。　勝ち時計は、去年のキングカメハメハに並ぶ２分２３秒３のレコードタイだったのだが・・・出遅れたこと、向こう正面で少しだけスムーズさを欠いたこと、そして最後は完全に流していたこと（何しろ、武豊はゴールする前にもうガッツポーズをしていたのだから）を考えると、内容では完全に凌駕していた。　ちなみに、インティライミが２着で、シックスセンスが皐月賞で見せた好走が単発では無いことを証明して３着に入ったのだが・・・正直、完全に霞んでしまった。

　これまで、競馬を観戦してきて２０年以上。　三冠馬も３頭（ミスターシービー、シンボリルドルフ、ナリタブライアン）見てきたこの自分をして、これほどの次元の馬は・・・初めて見たかも知れない。　少なくても、それまでの「去年のキングカメハメハ、ほどには・・・」という考えは、今回のレース内容で完全に覆されてしまった。　それにしても、このディープインパクト・・・レース前に暴れたり、スタートで出遅れたりとまだまだ「幼い」ことは間違いないだろう。　その段階で、既に過去に見た最強部類の「名馬たち」と肩を並べるほどに強いと思う。　ゴールする数１０秒前から、ゴール直後のウイニングランまでの間・・・言葉を発することができず、鳥肌を立たせながらただ呆然とするだけだった。　こんな感覚も、初めて経験することだった。　もし完成した時には・・・一体、どの次元まで行くのだろう？　そして、これほどの「特別な馬」が勝った日本ダービーを、その現場で見られた自分は、競馬好きとして本当に幸せ者だと、そう感じずにいられなかった。

　もちろん、この後菊花賞へ向かうことになると思うが、とにかく無事でいて欲しい！　いつもなら「ライバル探し」に血眼になる自分も、今年ばかりはそうする気も起きない。　こうなったら、まずは「無敗での３冠達成」の瞬間を見てみたい！　１０月の京都・・・是非現地で、この目でその瞬間を確かめてやるぞ！

　　（１番上の写真： 日本ダービーの本馬場入場における、ディープインパクト。　真ん中の写真：日本ダービーのスタート直後の様子。　ディープインパクトは、後ろから３番目の位置取り（見にくいけど）。　１番下の写真：圧倒的な強さを見せつけ、「無敗の２冠馬」となったディープインパクトのウイニングランの様子。　いやぁ、こんな馬当分出ないかも知れないよなぁ・・・それにしても、キレイに撮れた（笑））

［ＰＥＮＴＡの勝負馬券・結果！！］

勝負馬券：　３連単勝負も、２着に「７」が入っておらず、ハズレ。　でも、今回は馬券は外れても幸せな気分だったので、まあ良しとしよう（苦笑）

［優勝馬の戦歴及びレースデータ］

勝ったディープインパクトはこれで５戦５勝となった。父サンデーサイレンス、母ウインドインハーヘア（母の父アルザオ）という血統。　主な勝ち鞍は２００５年弥生賞（ＧII）、皐月賞（ＧI）。　　これで同馬は、皐月賞・日本ダービーと春のクラシック２冠を制したことになり、これは２００３年ネオユニヴァース以来で２年ぶりとなる。　しかし「無敗」でとなると、これは１９９２年に達成したミホノブルボンまでさかのぼることになる。　１番人気の優勝はこれで５年連続となるが、今回の単勝支持率７３．４％は、１９７３年ハイセイコーの６６．６％を凌ぐ過去最高の支持率となった。　サンデーサイレンス産駒のダービー馬は、２００３年のネオユニヴァース以来２年ぶり６頭目で、これは種牡馬別日本ダービー優勝の最多記録タイとなり、最終世代となる来年で新記録達成を狙う。　騎乗した武豊騎手は、２００２年にタニノギムレットで優勝して以来、３年ぶり４回目の日本ダービー優勝。　ＧI勝利は、これで通算４８勝目となるが、皐月賞・日本ダービーの２冠馬を操ったのは意外にもこれが初めて。　管理した池江泰郎調教師はかつてメジロマックイーンで菊花賞、天皇賞（春）などで優勝するなど大レース制覇の経験は多いが、日本ダービーは今回が悲願の初制覇となった。

　（上：　見事に第７２代のダービー馬となったディープインパクト号。　右：レースの表彰式で、今年のＪＲＡの顔を務めるＳＭＡＰの中居正広から花束を受け取る武豊騎手。　この後のインタビューでは「感動した」とコメント。　数々の名馬に跨った同騎手をして、このコメント・・・菊花賞での「無敗の３冠達成」のエスコートも頼むぞ！）